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真夜中の五分前 感想・考察|生き残ったのはどっち?観客に委ねる結末

最近、三浦春馬さんの出演作を一つ一つゆっくり観直しています。

そんな中で、日本・中国合作映画「真夜中の五分前」の感想を書いてみたいと思います。

上海で時計修理工として働く青年が出会ったある女性とのラブミステリー。




真夜中の五分前 作品情報

真夜中の五分前

公開年:2014年12月27

製作:日本・中国

ジャンル:ミステリー・ラブロマンス

脚本:堀泉杏

監督:行定勲

原作:本多孝好『真夜中の五分前 five minutes to tomorrow(side-A・side-B)』

上映時間:129分

真夜中の五分前 キャスト

  • リョウ役(三浦春馬)
  • ルオラン/ルーメイ役(リウ・シーシー)
  • ティエルン役(チャン・シャオチュアン)

 




真夜中の五分前 あらすじ

上海で時計修理工として働くリョウ(三浦春馬)は、プールで見掛けた清楚(せいそ)な雰囲気漂うルオラン(リウ・シーシー)と出会う。リョウは知り合ったばかりの彼女に、ティエルン(チャン・シャオチュアン)と婚約中の一卵性双生児の妹ルーメイ(リウ・シーシー)への結婚プレゼントを選んでほしいと頼まれる。そのことをきっかけに二人は親しくなっていくが……(引用元:シネマトゥデイ)

 

三浦春馬さんについて

好きな映画は?と聞かれて必ず答える映画があります。

それは「君に届け」

邦画はあまり多く観ない私ですが、「君に届け」は私の中で好きな映画ベスト10に入る大好きな映画です。

その映画以降、三浦春馬さんが気になるようになり、出演されているドラマや映画は毎回ほぼ観てきました。

邦画から遠ざかり気味な私にとって、唯一見たいと思える存在だった為、本当に本当に残念でなりません。

思い切ったコメディや色気のある役など、何でもこなせる俳優さんですが、私はやはりどこか影があり繊細な役を演じる三浦春馬さんが好きでした。

「僕のいた時間」「わたしを離さないで」そして、この「真夜中の五分前」のような。

 




感想(ネタバレなし)

この作品を観るのは久しぶりで、2回目です。

春馬くんが出演されている映画の中では「君に届け」に次ぐ、とても好きな作品。

何と言ってもその世界観が素晴らしい。

時計修理工の日本人青年、良(リョウ)

三浦春馬が演じるのは上海で時計修理工をしている青年、良(リョウ)

本作は全編中国語で、出演者も日本人は三浦春馬のみ

観る前には、「浮いてしまうんじゃないの?」とか、無理やり感があるのではないかと不安でしたが、三浦春馬がこの上海の映像の中に見事にハマっています。

観ているこちらも、中国語が上手く話せているかどうかという事より、リョウという役の演技に引き込まれていったので、いかに違和感なく中国語が話せていたのかが分かります。

最初はまだ中国語がそれ程上手くない設定で、たどたどしく会話をするシーンがあるのに、途中でストーリーが1年後になると、流暢に話すよう変化がつけられていて感心しました。

双子の姉妹、ルオランとルーメイ

リョウはある女性に出会う。彼女の名はルオラン。徐々に気持ちが近付いて行く二人。だがこのルオランは双子の姉妹であり、妹のルーメイの登場で二人の関係も変わり始める。

ルオランとルーメイの二役を演じるのが、リウ・シーシー
美しさはもちろん、その清楚な雰囲気と謎めいた表情が上手く、ルオランとルーメイの演じ分けが大袈裟でなかったのも良かったです。

真夜中の五分前

 

美しい映像と時計の音

本作は全体的に静かで、タイトルからも分かるように夜のシーンも多く暗い。
そんな月明かりや照明の映像が美しく、上海の街を多く映している訳ではないのに、時計店の室内や他の場面からも異国を感じさせる雰囲気があります。

原作は日本ですが、よくぞ舞台を上海にしてくれた!相手役を中国人女優にしてくれた!と思います。

真夜中の五分前

もしこれが日本が舞台だったら…全然雰囲気が出ない!

全編中国語というのも◎

二人共囁くように優しく話すので、これ程中国語が心地よく聞こえたのもこの映画が初めてでした。

静かな空間の中で、時計のカッチカッチと響く音が効果的
まるで一つの絵画のような美しい映画です

さらにリョウの素朴な衣装やバイクも雰囲気が出ていて良かった。




伏線だらけ

この映画、観ていると全てが伏線のように見えてきます。

ストーリーが進むにつれ、何が本当なのか分からなくなり、どのシーンにも意味があるように感じるのです。

説明的なセリフは無く、表情や小物などでその真意を読み取るようなシーンが多い。

真夜中の五分前
▲時計が何分を指しているか?というのも見逃してはいけません!

 

総評

私は最初から最後まで、この世界観にどっぷりハマって観ました。

途中からは特に、目の前にいるのはルオランなのか、ルーメイなのか、どういう意味なのかを考えながら観る事になるので退屈している暇はありません!

セリフの少なさや映像の美しさ、役者達の表情や目で感じさせる演技、それらがこの独特の世界観を生み出し、迷宮に迷いこんだような気分になります

正直なところ、行定監督の他の作品で好きなものが無いのですが、本作は原作と上海の空気感が、行定作品に見事にハマっていたように思います。

観終わった後、謎が解けてスッキリ!というタイプの映画ではないので、モヤっとするのが嫌な方には不評だと思いますが、私はこういう観る側に想像させる映画は好きなので、ミステリーとしてもラブストーリーとしてもとても良質な映画だと感じました。

そして…

私はこの作品の三浦春馬とリウ・シーシーの相性がとても良かったように感じました。
過去の春馬くんの作品の中で、相手の女優さんは多部未華子さん以外、しっくりきた印象が無かったのです。
ですがこのリウ・シーシーとの空気感がとても似合っていて、別の作品でもまた共演して欲しかったです。

 

感想(ネタバレあり)

↓以下ネタバレあり

 

生き残ったのはどっち?

さて、最大の謎、生き残ったのはどっち?って事ですよね。

これは監督によると答えはなく、観る側に委ねられている映画

そして私の感想は…最後に残ったのはルオランだと思いました。

1回目に観た時もそう感じたし、今回2回目の視聴でもやはり同じ。というより、そうあって欲しいという願望が強いのかも。

プレゼントされた服を知らなかった

普通で考えれば、これはルーメイだという証拠になります。

ですが私は、総合的に見てルオランだと思えるので、この時の理由付けとしては…

事故後、ルオランは自分がルーメイだと自己暗示にかかっていて、自分自身の中にルオランとルーメイの記憶が混在している(互いに全てを話していた為)
なので服を貰ったのが聞いた話なのか自分自身の記憶なのか、混乱状態にあった

と考えるのがシンプルでしょうか。

ただ、もう一つのパターンとして、

ティエルンは服をプレゼントした時点でルオランだと気付いていたというのもアリだと思いました。そして、ルオランもティエルンが気付いている事をどこかで感じていた。事故後に服を覚えていないのか聞かれ、ルオランとして答えるべきかルーメイとして答えるべきか、試されているようで戸惑った

という風にも思えたのですが、前者の方が嘘がなくてルオランらしいかもしれません。

 

両親が気付かない?

事故の後、姉妹の両親と会うシーンがあり、思わず父親がルーメイと名乗る娘にルオランと呼んでしまうシーンがありました。

あれはルオランを想ってつい言ってしまったのではなく、父親もルオランがルーメイに成り代わっているのだとどこかで感づいているのだと思います。

だけど親だからこそ今までの娘の葛藤を知っていて、「お前はルオランだ」と言えない。

 

ルーメイが泳げない

事故後、自分が本当にルーメイなのか混乱してしまったルーメイはプールに飛び込み、泳げない事で安心する。

う~ん、これが一番引っ掛かるかな。
残ったのがルオランなら、自分はルーメイだと自己暗示にかかっている状態なので溺れた…と解釈するしかないですが、強引ですかね?

 

時計の時刻

ラストのシーン。

「今を生きる」とリョウに手紙を送ってあったルオラン。
そして最後にリョウの元に戻された時計は5分遅らせたものではなく、現在時刻の「今」になっていた。

これが残ったのはルオランだと主張する観客の一番の理由では?
私もこれが決定的でした。

 

証拠以上に感じるもの

他にも頭の傷痕とか、試写会に行った記憶がない事とか、謎解き材料は他にもあるのですが、ルオランとルーメイ、どちら側が残ったと仮定しても、完璧ではないという印象です

どちらが残ったにしても強引さや矛盾が出てきてしまいます。

でも私はそういった証拠云々よりも、映像から感じる視線や表情から、どうしても残ったその女性はルオランにしか見えませんでした。

事故の後も自分のアイデンティティに悩む様子や、再び訪れたモーリシャスの教会での表情、時計を見つめる姿、リョウへの視線など、どう見てもルオラン。

ルーメイは事故前にリョウとはほぼ無関係だったのに、急にあそこまでリョウと距離感が近くなる事に共感出来ないのです。

 

ラストはハッピーエンド?

私はリョウとルオランが別れた結末だと思っています。

ルオランは今を生きると決めた。
だからこそ、時計をリョウに返した。

ルーメイでもなく、以前の自分でもなく、新しい自分としてリョウに別れを告げる意味だったのだと思います。

 

真夜中の五分前 サントラ

情緒的で切なく、映画の世界観にピッタリにサントラ。
聴いているだけで一つ一つの場面が目に浮かんできます。

 

まとめ

感想を書いてみると書きづらい映画でした、汗。
説明がつかないので。

謎に包まれた内容ですが、感覚的に観るような映画です。
白黒ハッキリしてよ!というタイプには向かないと思いますが、あやふやさがこの映画の良さでもあり、情緒的でとても心に残る作品なので是非観て欲しいです。

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(本文中の画像引用元全て “Five Minutes to Tomorrow” Film Partners)