映画「コーダ あいのうた」(原題:CODA)を観ました。
両親と兄がろう者であり、家族の中で自分だけ耳が聞こえる女子高校生の葛藤と夢の物語。
フランス映画「エール!」のリメイク版です。
Contents
コーダ あいのうた 作品情報
製作国:アメリカ・フランス・カナダ
ジャンル:コメディ・ヒューマン
脚本:シアン・ヘダー
監督:シアン・ヘダー
上映時間:111分
コーダ あいのうた キャスト
- ルビー役(エミリア・ジョーンズ)
- フランク役(トロイ・コッツァー)父親
- ジャッキー役(マーリー・マトリン)母親
- レオ役(ダニエル・デュラント)兄
- V先生役(エウヘニオ・デルベス)音楽教師
- マイルズ役( フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)同級生
コーダ あいのうた あらすじ
父親、母親、そして兄の3人は耳が聞こえないろう者。そんな中で唯一耳が聞こえる女子高校生のルビーは家族の為に通訳をし、家業である漁業を手伝う日々を送っていた。そしてある日、学校で合唱部に入部する事になったルビー。その合唱部の顧問はルビーの才能に気付き名門音楽学校への進学を勧める。しかし家族は家業があると反対し、ルビーも音楽学校の受験を諦めるが、ある日父親はルビーの歌の才能に気付く。
コーダ あいのうた 予告
コーダ あいのうた 感想(ネタバレなし)
アカデミー賞受賞、高評価、泣けると話題のこの作品。
その予備知識があってもまさかここまでの良い作品だとは。
号泣。
もうもう号泣です!!!!
シクシク泣くレベルではなく涙が止まらなくなる大洪水状態でした。
いや~、ここまで泣く映画を見たのは久しぶり。何年ぶりだろう。
私は今まで、好きな映画や良い映画と聞かれれば必ず「リトルダンサー」と答えていました。もう20年以上も前の映画で、でもそれ以降この映画を超える程イイ!と思える映画に出会えなかったのですが…。
今回、リトルダンサーに匹敵するぐらいの良い映画でした。
ストーリーから伝わる温かさや優しさのようなものも、リトルダンサーと重なる映画だったと思います。
ろう者とコーダ(ろう者の家族)がテーマの映画なのに、明るくて笑えて可愛い!下手にお涙頂戴になっていない所がいい。なのに後半は涙腺崩壊。
いや、もうほんと、最高の映画です。
- メインキャストを実際のろう者が演じている
- 障害があっても明るいジョーク満載で笑える
- 見せ場の演出が素晴らしい
- エミリア・ジョーンズの表現力と歌唱力
- ろう者やコーダの視点に立ち感じる事が出来る
- 選曲が最高
ルビー
ルビーを演じるエミリア・ジョーンズ。
キャスト全員が最高の映画だけど、このエミリア・ジョーンズの演技や歌声とても良かった。
特に後半の歌唱シーンは必見!何度見ても泣けます。
母親ジャッキー
母親を演じるのは実際にろう者である女優のマーリー・マトリン。
マーリー・マトリンといえば、映画「愛は静けさの中に」でアカデミー主演女優賞を受賞した女優さん。あの映画を見た時も、実際のろう者が演じているなんて凄いなぁと感じた記憶がありますが、あれから36年⁉
本作では改めてマーリー・マトリンの演技の幅を感じました。
父親フランク
そして!父親フランクを演じるのがこのトロイ・コッツァー。
こちらも実際にろう者の俳優ですが、本当に素晴らしかった。
私は本作で最も印象的だったのがこのトロイ・コッツァーの演技です。
存在感、表情から滲み出る感情が素晴らしく、拍手ものの演技でした。
母親役のマーリー・マトリンは最初からオファーされたようですが、父親役と兄役も実際のろう者が演じる事をマトリンが望んだとか。
兄を含め、この3人のろう者同士の会話(手話)が、素人が見ていてもリアリティがあり、やはり聴者が演じると伝えきれないものがあるとヒシヒシ感じました。
音楽顧問 V先生
そしてこの映画を見たら誰もが好きになるこのV先生。
キャラクターが濃くて、それが良い味を出しています。
この先生がいたからこそルビーが家族以外の世界を知るきっかけになるのです。
コーダ あいのうた 感想(ネタバレあり)
↓以下ネタバレあり
言葉に出来ない感情を手話で表現
私がこの映画を見始めて、完全にハマったのがこのシーン。
ここ!
V先生に歌っている時の気持ちを聞かれて、言葉で答えられず手話で表現するルビー。
そしてそれを見て頷くV先生。
このシーンでグッと胸を掴まれました。
この映画は何かある…そう感じた瞬間です。
ろう者の世界を表現
次におぉ!と思ったのは、ルビーの発表会を家族3人で見に行った時。
ルビーがマイルズとデュエットするシーンで、突然音が消えて無音になる演出。
なるほど、これがろう者の世界なのだ。
前半からずっと見ていると、このデュエットシーンはきっと見せ場の一つになるのだろうと予想しているものの、きっと「聴かせる見せ場」だと想像していたので、まさか逆のこのようなシーンになるとは…上手いなぁと唸りました。
トロイ・コッツァー圧巻の演技
そしてそして、皆さん大号泣のこのシーン。
もうね、涙ダダ洩れですよ…。
↓こんな事やってたふざけた父親が
あんな良い表情で娘の声を感じるなんて…その演技の素晴らしさにただただ涙が流れました。
体を触れて声を感じる…というのはろう者をテーマとしたドラマや映画ではありがちですよね。だけど本作ではわざとらしさなど一切感じず、自然にこのシーンに感情移入出来ました。
何度も見たくなる名シーン
で、父親がルビーの声を感じた名シーンで、「あぁ、これがきっと最大の見せ場なんだろう」と思ったんですよ。
そしたらその後に、もっと泣けるシーンがあった↓
この映画最大の名シーン。
ルビーが受験の為にオーディションを受け、その姿を2階席から見つめる家族3人。
そしてそれに気付いたルビーは家族に向かって歌詞を手話で表現します。
この時のルビーの歌声や表情が素晴らしいし、何よりそれを見る家族の表情が最高過ぎる。
彼らの表情に涙は無く、ただただ幸せそうに喜んでいる姿に感動します。
ここで下手に涙を流したりしないのが良いんです。
歌う側も見る側も、お互い笑顔。それがこの映画の良さを最も表しているような気がしました。
ラストの父親のgo!
そして最後にルビーを見送る家族。
父親はここで最初で最後の言葉を発します。
「go!」
実際に演じているのがろう者であると知るとさらにこの声に感動するのです。
フランス映画「エール!」との比較
リメイク元のフランス映画「エール!」も、ずっと以前から気になっていたのですが未見ででした。
でも本作を見終わった瞬間、あまりにも素晴らしかったので速攻「エール!」も見てみたのですが…。
正直比較にならないぐらい私はダメでした。
ストーリーはほぼほぼ同じなのにね。
ちょっとしたセリフの違い、演出の違い、撮り方や演技の差により、ここまで印象が変わるのか…というのが正直な感想です。
とはいえ、決して「エール!」も悪くないんですよ。
そもそもの原作はこちらがベースなのだから、こちらの脚本家の感性が素晴らしいのだと思いますが、う~ん、やっぱり演出かなぁ…。
そして「エール!」の方は、ろう者の役も全員聴者が演じています。
見ていると聴者とは思えないぐらい演技は素晴らしいですが、それでも本作と比較すると存在感や感情の伝わり方が足りませんでした。
- 歌っている時の感情を先生に聞かれて手話で表現するシーンがない
- マイルズとの恋の描き方が雑過ぎる
- コーダでは兄の存在の意味も大きかったが、エールの弟はただいるだけ
- 母親が娘を生んだ時ろう者であって欲しかったと伝えるシーンに温かさが無い
- 父親が娘の声を手で感じるシーンがあっさりし過ぎ
- 歌、曲全てがコーダの方が良い
- オーディションで先生はわざと間違えるだけでいい。言葉はいらない
- オーディションで歌っている姿を見る親が泣くと冷めてしまう
- ラストの父親の「go!」が無い
書き出したらキリが無いですが、コーダの方は全体的にキラキラしていて、このような「エール!」とほぼ同じシーンでも↓
最初から背中合わせで歌い始める(エール!)と、最初は向かい合い、気まずくて背中合わせになろうと言う(コーダ)では、伝わってくる恋心が全く違ってくるんですよね。
ただレビューなどを見ると、エール!の方が後半の歌が良かったという方も多くいるようなので、人により感じ方は違うようです。
Both sides now
オーディションシーンでルビーが歌った曲。
曲もだけど歌詞が最高に良い。
1966年というはるか昔の曲なのに、色褪せる事なく胸に沁みる名曲です。
まとめ
今更コーダ?
と我ながら思いますが、これだけ話題になり評価が高いのも頷ける作品でした。
個人的には好きな映画ランキング1位2位を争う作品です。
今までの障がい者やその家族をテーマとした作品とは違う、ユーモアとハッピーに溢れる映画なので、絶対にお勧めしたい映画です。